Fate/side story
フェイト/サイドストーリー/螺湮(ライン)
八卦掌の歩法と同じ
義体の整備が長引いて夜更けになった。
突然、視界の隅に何か黒いモノが出現した。
犬のような姿で長い毛が生えており爪の無い脚が熊に似ている。
獣化形態のアヴェンジャーだった。
「アイリさん!」
俺が声をかける前にアイリさんが片手に三本のペーパーナイフを錬成して構えていた。
実戦に慣熟しているようだ。
セラもアタフタと戦闘用の魔杖を用意しているが相変わらず実戦に向いてない。
俺も全身義体としている真鍮の素体がバラバラだが投影魔術だけなら使用可能だ。
アインツベルン城の三階工房が戦場になるかと思われた。
「ガタガタ騒ぐんじゃねえよ、お別れの挨拶に来ただけだ」とアヴェンジャーが言った。
偽善者を忌み嫌い、殺人鬼のような悪人でも筋を通す者なら媚びてみせるアヴェンジャー独特の礼節か。
戦闘目的で前に進むことも無いようだ。
アヴェンジャーが自分の尻尾を咥えようとする愚犬のように、その場でグルグルと回っているだけだ。
だが正確に八歩で一周する八卦掌の歩法と同じだと気付いた。
休、生、傷、杜、景、死、驚、開の八門を犬足でありながら正確に踏んでいる。
唐突に立ち止まったアヴェンジャーが窓から空を見て笑っていた。
「月が満ちる夜の暦が遷ろう時だ」とアヴェンジャーが言った。
「奥様! 満月です!」とセラが言った。
確かに満月が中天にかかっていた。
満月や新月の時に普段じゃ考えられないような出来事が起こる確率が高い。
古くから満月、新月に儀式などの大切なことを実践する魔術の流派も多い。
混沌の化身たるアヴェンジャーの歩法で何かが起こる。
フェイト/サイドストーリー/螺湮(ライン)
八卦掌の歩法と同じ
義体の整備が長引いて夜更けになった。
突然、視界の隅に何か黒いモノが出現した。
犬のような姿で長い毛が生えており爪の無い脚が熊に似ている。
獣化形態のアヴェンジャーだった。
「アイリさん!」
俺が声をかける前にアイリさんが片手に三本のペーパーナイフを錬成して構えていた。
実戦に慣熟しているようだ。
セラもアタフタと戦闘用の魔杖を用意しているが相変わらず実戦に向いてない。
俺も全身義体としている真鍮の素体がバラバラだが投影魔術だけなら使用可能だ。
アインツベルン城の三階工房が戦場になるかと思われた。
「ガタガタ騒ぐんじゃねえよ、お別れの挨拶に来ただけだ」とアヴェンジャーが言った。
偽善者を忌み嫌い、殺人鬼のような悪人でも筋を通す者なら媚びてみせるアヴェンジャー独特の礼節か。
戦闘目的で前に進むことも無いようだ。
アヴェンジャーが自分の尻尾を咥えようとする愚犬のように、その場でグルグルと回っているだけだ。
だが正確に八歩で一周する八卦掌の歩法と同じだと気付いた。
休、生、傷、杜、景、死、驚、開の八門を犬足でありながら正確に踏んでいる。
唐突に立ち止まったアヴェンジャーが窓から空を見て笑っていた。
「月が満ちる夜の暦が遷ろう時だ」とアヴェンジャーが言った。
「奥様! 満月です!」とセラが言った。
確かに満月が中天にかかっていた。
満月や新月の時に普段じゃ考えられないような出来事が起こる確率が高い。
古くから満月、新月に儀式などの大切なことを実践する魔術の流派も多い。
混沌の化身たるアヴェンジャーの歩法で何かが起こる。
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COOLDOWN/side story
クールダウン/サイドストーリー/夜刀浦の神(CD)
霊気の視覚化
霊気の操作を【魔法カバラー入門】に記述されている通りの順番で練習するため鞄から必要な道具を取り出した。
昨日の補習で天野が用意しろと言ったマジックアイテムと称するガラクタだ。
コウジさんの店がオカルトショップだったので、それらの入手が容易だった。
魔女の校長が占いで適当に素人を選択したと聞いたが、俺の下宿先が確かに適当で適切だ。
最初に皮膚の触覚として霊気を感覚化する技能を【魔法カバラー入門】に記述されたボックス呼吸法を練習して修得した。
次に視覚として霊気を感覚化するのだ。
ロウソクとロウソク立てからなる百円の『キャンドル』セット。
コウジさんの好意で半額に値引きしてもらった既製品の『ブラックミラー』。
コンビニで拡大カラーコピーした『煌めく色彩ディスク』。
この三種類のマジックアイテムが【魔法カバラー入門】の記述によると霊気を視覚化する練習に適しているという。
『ブラックミラー』の情報が記載されたページに自作することが原則だと記述されていたが時間効率を考慮してコウジさんのオカルトショップで売っていた『ブラック・スクライング・ミラー』税込み六千円を値引き交渉して三千円に勉強してもらった。
対価としてアルバイトが長期と決定したが、学生の俺じゃ節約しなけりゃ仕方ない。
『煌めく色彩ディスク』(フラッシング・カラー)なら【魔法カバラー入門】の付録として巻末にあったし『キャンドル』も近所の百均店で何とかなったから助かった。
薄暗い第2図書室の机にキャンドルを設置して灯をともした。
それから【魔法カバラー入門】に記述された順番通りに練習して霊気の視覚化が成功した。
オーラの伸縮を練習している途中で時間切れとなった。
まあいい。
帰って店番のアルバイトしながら練習を続行しよう。
キャンドルの灯を消した。
クールダウン/サイドストーリー/夜刀浦の神(CD)
霊気の視覚化
霊気の操作を【魔法カバラー入門】に記述されている通りの順番で練習するため鞄から必要な道具を取り出した。
昨日の補習で天野が用意しろと言ったマジックアイテムと称するガラクタだ。
コウジさんの店がオカルトショップだったので、それらの入手が容易だった。
魔女の校長が占いで適当に素人を選択したと聞いたが、俺の下宿先が確かに適当で適切だ。
最初に皮膚の触覚として霊気を感覚化する技能を【魔法カバラー入門】に記述されたボックス呼吸法を練習して修得した。
次に視覚として霊気を感覚化するのだ。
ロウソクとロウソク立てからなる百円の『キャンドル』セット。
コウジさんの好意で半額に値引きしてもらった既製品の『ブラックミラー』。
コンビニで拡大カラーコピーした『煌めく色彩ディスク』。
この三種類のマジックアイテムが【魔法カバラー入門】の記述によると霊気を視覚化する練習に適しているという。
『ブラックミラー』の情報が記載されたページに自作することが原則だと記述されていたが時間効率を考慮してコウジさんのオカルトショップで売っていた『ブラック・スクライング・ミラー』税込み六千円を値引き交渉して三千円に勉強してもらった。
対価としてアルバイトが長期と決定したが、学生の俺じゃ節約しなけりゃ仕方ない。
『煌めく色彩ディスク』(フラッシング・カラー)なら【魔法カバラー入門】の付録として巻末にあったし『キャンドル』も近所の百均店で何とかなったから助かった。
薄暗い第2図書室の机にキャンドルを設置して灯をともした。
それから【魔法カバラー入門】に記述された順番通りに練習して霊気の視覚化が成功した。
オーラの伸縮を練習している途中で時間切れとなった。
まあいい。
帰って店番のアルバイトしながら練習を続行しよう。
キャンドルの灯を消した。
Fate/side story
フェイト/サイドストーリー/螺湮(ライン)
スターリングシルバーの刃
アインツベルン城の三階工房でセラに義体の整備と顔面の修復を依頼しようとしたところアイリさんがゴソゴソと持参の荷物を漁り始めた。
「シロウくん! セラをフワフワワウワウたぶらかす前に注目!」とアイリさんが言った。
アイリさんの手に現代的なヘルメットがあった。
米軍制式採用の抗弾樹脂製でライフル弾の直撃でも貫通しない代物だ。
「元々の世界だと切嗣と私で小規模な民間軍事会社を経営しているのだけど」
そう言ってアイリさんがヘルメットを宙に投げた。
次の瞬間、ズカッと音を立ててアイリさんが投げた銀のペーパーナイフがヘルメットに突き立った。
抗弾樹脂の装甲を貫き穿ち、強化魔術で魔力が籠められたスターリングシルバーの刃が柄元まで埋まっている。
歩兵の頭など木っ端微塵に粉砕する大口径の徹甲弾と同等の威力だ。
「私も現場に出る機会が多いから手裏剣術の一つくらい心得てるって覚えてね?」
そう言ってアイリさんがニッカリと笑った。
修羅の笑みであった。
吹っ飛んで壁に激突した後ゴロゴロと床を転がるヘルメットが何だか俺の生首に思えた。
「奥様、御安心くださいませ。エミヤシロウにそんな度胸など御座いません」とセラが言った。
もしも浮気すれば桜が憤怒して黒桜に変身するし、それ以上の恐怖など思い付かないな。
何とかアイリさんも納得してくれたらしく、やっとセラが全身義体の分解整備を始めてくれた。
俺の未熟な投影魔術で具現化した部品だと工作精度が低くて合いが悪い。
アーチャーならベアリング一つとして歪みも狂いも無い精確な部品を投影してガタ無しブレ無しの精密機械を具現化するのだが、釣りの自動制御式リールなどを作って遊ぶばかりだ。
俺も未だ修行が足りず余裕も足りないな。
フェイト/サイドストーリー/螺湮(ライン)
スターリングシルバーの刃
アインツベルン城の三階工房でセラに義体の整備と顔面の修復を依頼しようとしたところアイリさんがゴソゴソと持参の荷物を漁り始めた。
「シロウくん! セラをフワフワワウワウたぶらかす前に注目!」とアイリさんが言った。
アイリさんの手に現代的なヘルメットがあった。
米軍制式採用の抗弾樹脂製でライフル弾の直撃でも貫通しない代物だ。
「元々の世界だと切嗣と私で小規模な民間軍事会社を経営しているのだけど」
そう言ってアイリさんがヘルメットを宙に投げた。
次の瞬間、ズカッと音を立ててアイリさんが投げた銀のペーパーナイフがヘルメットに突き立った。
抗弾樹脂の装甲を貫き穿ち、強化魔術で魔力が籠められたスターリングシルバーの刃が柄元まで埋まっている。
歩兵の頭など木っ端微塵に粉砕する大口径の徹甲弾と同等の威力だ。
「私も現場に出る機会が多いから手裏剣術の一つくらい心得てるって覚えてね?」
そう言ってアイリさんがニッカリと笑った。
修羅の笑みであった。
吹っ飛んで壁に激突した後ゴロゴロと床を転がるヘルメットが何だか俺の生首に思えた。
「奥様、御安心くださいませ。エミヤシロウにそんな度胸など御座いません」とセラが言った。
もしも浮気すれば桜が憤怒して黒桜に変身するし、それ以上の恐怖など思い付かないな。
何とかアイリさんも納得してくれたらしく、やっとセラが全身義体の分解整備を始めてくれた。
俺の未熟な投影魔術で具現化した部品だと工作精度が低くて合いが悪い。
アーチャーならベアリング一つとして歪みも狂いも無い精確な部品を投影してガタ無しブレ無しの精密機械を具現化するのだが、釣りの自動制御式リールなどを作って遊ぶばかりだ。
俺も未だ修行が足りず余裕も足りないな。