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労宮のツボ
COOLDOWN/side story
クールダウンsidestory夜刀浦の神(CD)
労宮のツボ



 実戦形式の試験が終わり智内が退いた。
 全員負傷してボロボロだったのだが、フェレットが再生能力で即座に全快した。
 同じ吸血鬼の香月さえも驚く高速再生だった。
 ヒトの身である俺とミヒャエルの応急処置をしてから地上に帰還することになった。
 俺が湖川のかまいたちで斬られた浅手に香月が包帯を巻いてくれた。
「ミヒャエル! その邪魔くさい兜を取って顔を見せなさい!」とフェレットが言った。
「へへ……フェレットが心配してくれただけで、もう大丈夫だよ」とミヒャエルが言った。
 ただ壁としての重装甲で踏ん張っていたミヒャエルが重傷だった。
 装甲の隙間から血が滴っている。
 智内が召喚した魔物の攻撃を散々に防御して右腕の盾が砕けていた。
 泡体が星慧さんの昔話に登場する諸喉衆のように際限なく堅牢な爪牙を生成し続けたのだ。
 それでも決してフェレットの背後に魔物を近寄らせなかったのだから大した男である。
 フェレットもミヒャエルの応急処置を始めた。
 ミヒャエルの右手が裂けてチタン合金の人工骨が見えていた。
 以前、人外の握力で圧縮骨折したため移植したのだという。
 フェレットがミヒャエルの右手を消毒して滅菌テープでグルグル巻きにした。
 そうして最低限の止血が完了したので全員で地上に帰還した。
 ミヒャエルの右手を急いで縫合する必要がある。
 保健室に行くと何故か超自然科学担当の女教師である大十字紅朔が留守番していた。
 教師らしくない長身の美女で、大人の女性が発する妖艶な気配と、胸元が盛大に開いたスーツが印象的だ。
 紅い髪に紅い瞳、紅いスーツと、全てが赤で統一されている。
 大十字紅朔が胸元に刻み込まれた薔薇のタトゥーを撫でながら、ミヒャエルの診察を始めた。
 右手に巻かれていた滅菌テープを剥ぎ取り、チタン合金の人工骨を見る。
「この程度なら保健の先生じゃなくても、わたしだけで大丈夫ねえ」と大十字紅朔が言った。
 大十字紅朔がポケットからボルトを取り出し、ミヒャエルの右手に埋め込むとフェレット級の速度で完全に再生してしまった。
 大十字紅朔が意味不明の専門用語を多用して事後の説明を始める。
「デモンベインのヒヒイロカネだから完璧に馴染めばレムリア・インパクトを撃てるかも」
 仙術で労宮のツボとも呼ばれる印形掌輪(パーム・チャクラ)に奇妙な遺物を融合させたらしい。
 後で何かミヒャエルが、しっぺ返しを喰いそうな魔術的な処置だった。
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労宮のツボ | クトゥルフ呪文
シルバートゥース実験
HARUHI/side story
涼宮ハルヒの憂鬱sidestoryラヴクラフトの世界
シルバートゥース実験



 司書室の奥にある第2図書室に入る。
 龍見を探して書架の回廊を抜け、階段を降りた。
 地下に深すぎるダンジョンのようだ。
 書庫を発見したので覘いてみると龍見が錬金術のような意味不明の実験をしていた。
 龍見が実験の手を休めて、こちらに向いた。
 それから俺に青いファイルブックを差し出した。
「君が元の世界に帰還する方法が記述された論文を見つけておいたよ、ほら」
 ……手回しのいいことだ
「そりゃあ、ね。これが私の仕事だからな」
くつくつと笑う男の不愉快な態度を無視して渡された綴じられた論文を読もうとしたが難解な数式の羅列ばかりでバカな俺の頭じゃ理解不可能のようだった。
 しかし帰還に必要な知識を得なければ話にならない。
 俺でも読解可能な英語部分のみを拾い読みした。
 1997年にミスカトニック大学の物理学者ロバート・ゴドラム教授が記述した学術論文のようだ。
 以前、長門が貸してくれたSF小説のテーマに近い。
 1個の対象物、数としての実無限(アレフ)という数学的無限に関するものだった。
 無限集合論における可算濃度が集合の大きさを表す数だから、超限数(無限の大きさ)と別に定義するとか何とか。
 論文の正式名称を日本語訳すると『アレフ∞の濃度を持つ超越次元空間の写像操作と選択的エンタングルメントの任意縮退理論』だそうだ。
 とてもじゃないが覚え切らんから【エンタングルメント】という略称で呼ぼう。
 要するに、ヒッグス粒子から成るヒッグス場も、エーテルが持つ粒子としての一側面に過ぎないという学説のようである。
 しかしマイケルソン・モーリーの干渉計で実験された結果、空間を構築するエーテルの存在が科学的に否定されてなかったか?
「この世界において、科学者のE・シルバートゥースがレーザー方式の精密な測定装置を使って実験によるエーテルの検出に成功している。ハロルド・アスプデンがシルバートゥース実験をめぐる論文を発表しているが読んでみるかね?」
 マイケルソン・モーリーの時代じゃ実験器具の工作精度が低すぎてエーテルの検出が技術的に不可能だったに過ぎないそうだ。
「魔力(エーテル)の操作方法を【魔法カバラー入門】で学ぶ前に、気(魔力)の感覚化方法を【超能力仙道入門】の記述通りに実践してみなさい」と龍見が言った。
 そして龍見が実験に戻ってしまった。
 書架の横に椅子があるから、渡された【超能力仙道入門】を熟読してみることにした。

シルバートゥース実験 | クトゥルフ呪文
兵法において
COOLDOWN/side story
クールダウンsidestory夜刀浦の神(CD)
兵法において



 ずっと下に階段を降り続けながら対策を練る。
 いかに勝つか。
 『勝つべくして勝つ』ことが兵法の理想だ。
 偶然性に頼ることなく、必然的に勝てる方法を模索するため、天野と栃草から可能な限りの情報を聞き出した。
 そして物理無効の湖川にダメージを与える手段を得た。
 嬉しい誤算だがフェレットの魔剣も重力属性の魔法斬撃が可能だと判明した。
 手持ちの駒を確認したが決して多くない。
 この多くない持ち駒を使って、負けない将棋を打つ方法を考えてゆかねばならない。
 兵法において『不敗の地に立つ』という考え方である。
 プランを練りながら書架の回廊を巡り歩き、やっと大書庫前の広場に到着した。
 敵対者としての役割を与えられた試験官の二人が待ちくたびれていた。
「面倒くせぇ……気が乗らねぇ事この上ねぇな」と湖川が言った。
「何を今更」と智内が言った。
「かったりィが……相手してやろうじゃねぇか」
 湖川の持つ『黒い本』が日本刀に変化した。
 智内がタロットカードを浮遊させ虚空に展開すると、足下で薄汚い泡の塊が際限なく増殖し始めた。
「知性のない消えゆく泡……骨まで溶かすわよ?」と智内が言った。
「テケリ・リ……テケリ・リ」と食虫植物のような泡体が鳴いた。
 熱意が欠けているものの、湖川と智内が単純に強いため長期戦となった。
 戦というものにおいて、すべて勢いが決するところがある。
 しかし兵法通り『勢いに乗じる』ということに移れない。
 二人とも戦い慣れした魔術師だった。
 戦闘に熱狂することなく冷静かつ冷徹な平常心で淡々と攻撃してくる。
 戦い易いが倒し難い。
 魔法属性の斬撃が可能な俺とフェレットが物理無効の湖川を攻撃し、香月が機動力と命中率を生かして智内を狙い、鎧の装甲が分厚いミヒャエルが盾役となった。
 盛り上がりに欠けるグダグダの泥仕合の結果、何とか勝利した。
 岩塩で再構築された湖川の身体をフェレットの魔剣が撃ち砕いた時点で、智内がアッサリと降参したのだ。
 香月やフェレット、そしてミヒャエルがいて助かった。
 こうして俺も魔術の才能において、一応の実戦証明が取れたのである。

兵法において | クトゥルフ呪文

| 不老長生の腹式四拍呼吸法 |

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