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深い闇 Pitch Black

メノウの舎利石は気を発す。
四拍呼吸にて気を操作する。

1・2・3・4と吐く。
1・2と止める。
1・2・3・4吸う。
1・2と止める。

繰り返し練習する。

諸行無情ゆえに、あらゆる事象に興味を持つ。
諸法無我ゆえに、あらゆる物事から執着を捨て去る。
涅槃寂静ゆえに、何があろうとも泰然自若と構える。


アクセル・ワールド
DOD2
ニーアレプリカント・ゲシュタルト
クロスオーバー
ウェポンストーリー
深い闇 Pitch Black


ブレイン・バーストというゲームがある。
ニューロリンカー用アプリケーションで、
正式名称《Brain Burst 2039》。

単なるゲームとしては剣呑だが、
フィジカル・バーストなどの機能もあるから、
フィジカル・ノックに加速能力を使うことも可能だ。

人生はゲームの如しという手厳しい教訓もあるが、
それには深い理由があるのだよ。

私の知人に勤勉な数学者がいる。

Yui(ユイ)と名乗る女性だ。
我らが遊ぶアプリケーションの製作者でもある。

二酸化ケイ素を素材とした、
フォトニック多重積層構造体の研究もしているが、
いまだ1cm未満の筐体を作るのが限界のようだ。

予算が付かないものは証明できない、
というのが科学の現状ということだ。

量子コンピュータの研究で糊口をしのいでいる。
ソフトウェアが彼女の得意分野だからね。

とある企業から出される予算だが、
研究の応用が生み出す利益が基準で決定される。

長すぎると退屈だろうから大部分を端折るが、
始まりの話をしよう。

昔々あるところに、息をするように人を殺す男がいた。
理由も理念も理屈も理想もなく、ただ人を殺し続けた。
人を殺したいわけではなく、男にはそれしか出来なかった。

ある日、男は路地裏で少女を取り囲む集団に出くわした。
男はいつもの様に特に理由もなく集団を殺戮しつくした。

残った少女を殺そうと振り返ると、
少女は涙を浮かべながら男に感謝していた。
人から感謝されたのは、男の人生で初めてだった。
男は自分のやったことに初めて意味を見いだすことができた。

男は満面の笑みを浮かべると、
感謝の気持ちを込めて人斬り包丁を振り下ろした。
血溜まりに沈む少女を優しく見下ろした後、
男は自信に満ちた足取りで歩き去った。

男の行動に、あえて理屈を付けるなら、
それ以外の選択肢を知らなかったからだ。

男は無知だったが、
感謝して命を頂くこと、
ただ、それだけは学んだ。

それは男にとって信仰と言えた。
男は命を信仰した。
感謝して命を頂いた。

数多の敵を殺害し、
他者の命を喰らい、
それらを糧に成長した。

基礎的な練習を繰り返して、
人斬り包丁の一振りを身体に刷り込み、
使用できる技術についての理解を深め、
純粋な鍛錬によって自分の肉体全てを造り替えた。

男は傭兵に成り、
斥候という兵種を選択した。
野生動物にも認識されない気配遮断と、
愛用の人斬り包丁を使う無音戦闘が特技だからだ。

男は人として生きるのが困難なほど戦闘能力過多だったが、
人と戦って殺す商売は天職と言えた。
男は経験を積み重ねて成功した。
とある傭兵団の団長と成ったのだ。

いわゆる民間軍事会社である。

男は結婚して家族を得た。
やがて娘が生まれた。

男は妻子を愛したが、
最愛の妻と娘を前にして男は迷った。
積み重ねた経験が重荷となったのだ。

男は迷いの果てに、
とある選択をした。

殺害して血肉と成り果てた、
他者の命を喰らい、
呑みこんだ。

男は命を信仰した。
感謝して命を頂いた。

男は罪人として死んだが娘は残された。

唯(ユイ)が娘の名である。

感謝して命を頂くこと。
命を信仰した男にとっての唯一であるがゆえに。

娘は信仰を受け継いだ。
愛する父から与えられたものであるがゆえに。
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深い闇 Pitch Black | ショートストーリー

| 不老長生の腹式四拍呼吸法 |

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